algebraic toplogy 1 基本群

 J.P.MayのA Concise Course in Algebraic Topologyの自分用勉強ノート.練習問題も解く.

1.1 基本群定義
連続写像ホモトピー X,Y位相空間としf,g:X \to Y連続写像とする.このときf,gホモトピックとは連続写像H X \times I \to Yが存在し \begin{eqnarray*} H|_{X \times \{0\}} &=& f \\ H|_{X \times \{1\}} &=& g \end{eqnarray*} を満たすことである.ただしI=[0,1]とする.またHホモトピーという.

 位相空間X上の曲線とは連続写像a I \to Xのことでa(0) = a(1)を満たすとき特に閉曲線という.xを始点としyを終点とする曲線を$$a:x\mapsto y$$とかく.またc_xxに値をとる定値写像とする.曲線間のホモトピーにはさらに次の条件を課す.

曲線のホモトピー 位相空間X上の曲線a, b: x \mapsto yがホモトピックとは連続写像H:I \times I \to Xが存在し \begin{eqnarray*} H|_{I \times \{0\}} &=& a \\ H|_{I\times \{1\}} &=& b \\ H|_{\{0\} \times I} &=& c_x \\ H|_{\{1\} \times I} &=& c_y \end{eqnarray*} を満たすこととする.

 曲線a:x \mapsto y, b:y \mapsto zに対し,新たな曲線a \cdot bを $$ a \cdot b(t) = \left\{ \begin{array}{11} a(2t) & (0 \leq t \leq \frac{1}{2}) \\ b(2t-1) & (\frac{1}{2} \leq t \leq 1) \end{array} \right. $$と定義する. またa^{-1}: y \mapsto xを $$ a^{-1}(t) = a(1-t) $$と定義する.

基本群: X位相空間x \in Xとする.$$\pi_1(X,x) := \{a:x \mapsto x\}\ /_{\mathrm{homotopy}}$$はwell-defindな演算$$[a] \cdot [b] = [a \cdot b]$$により群となる.これをXxを基点とする基本群という.単位元[c_x]で[a]の逆元は[a^{-1}]である.
1.2 基点の取り換え

 Xの同じ連結成分に属するx,yに対し\pi_1(X,x),\pi_1(X, y)の関係を述べる.曲線a:x \mapsto yに対し準同型\gamma(a): \pi_1(X,x) \to \pi_1(X, y)を$$\gamma(a)([b])=[a \cdot b \cdot a^{-1}]\ \ \ \ \ ([b] \in \pi_1(X, x))$$と定める.この写像は逆写像\gamma(a^{-1})を持つので実際には同型写像となる.この\gamma(a)は曲線aの選び方に依存する.しかしa,a':x \mapsto yがホモトピックならば\gamma(a) = \gamma(a')である.

また\pi_1(X, x)が可換群ならば道の選び方によらない標準的な同型が存在する.実際 \begin{eqnarray*} \gamma(a'^{-1})\circ \gamma(a) ([b]) &=& \gamma(a'^{-1} \cdot a)([b]) \\ &=& [a'^{-1} \cdot a \cdot b \cdot a^{-1} \cdot a'] \\ &=& [a'^{-1} \cdot a] \cdot [b] \cdot [a^{-1} \cdot a'] \\ &=& [a'^{-1} \cdot a] \cdot [a^{-1} \cdot a'] \cdot [b] \\ &=& [b] \end{eqnarray*} より\gamma(a) = \gamma(a')となる.
1.3 ホモトピー不変

連続写像p:X \to Yは基本群の準同型$$p_*:\pi_1(X,x) \to \pi_1(Y, p(x)),\ \ \ [a] \mapsto [p \circ a]$$を導く.ホモトピックな連続写像p,q:X \to Yホモトピーh:p \simeq qとし,a=h|_{\{x\} \times I}とする.このとき次が成り立つ.

命題: 次の図式は可換である. $$ \xymatrix{ & \pi_1(X,x) \ar[ld]_-{p_*} \ar[rd]^-{q_*} \\ \pi_1(Y, p(x)) \ar[rr]_-{\gamma(a)} & & \pi_1(Y, q(x)) } $$
1.4 \pi_1(\mathbb{R}), \pi_1(S^1)の計算
  • \pi_1(\mathbb{R})= 0
  • \pi_1(\mathbb{S^1})=\mathbb{Z}

証明: \mathbb{R}の基本群は後に,可縮な空間の基本群は自明であるというより一般的な命題を証明する.従ってS^1についてのみ示す.ただし証明の肝となるリフトの一意性に関する部分は後で示されるのでここでは既知とする.互いに逆な2つの写像 \begin{eqnarray*} &i&: \mathbb{Z} \to \pi_1(S^1,1)\\ &j&: \pi_1(S^1, 1) \to \mathbb{Z} \end{eqnarray*} をつくる.iの方は簡単でi(n)= [f_n]で,f_n(t) = e^{2 \pi i n t}である.p: \mathbb{R} \to S^1を$$p(x) = e^{2\pi i x}$$と定義する.リフトの一意性よりS^1上の任意の閉曲線a:1 \mapsto 1に対し,\mathbb{R}上の曲線a'が一意に存在し$$p \circ a' = a$$を満たす.jを$$j([a]) = a'(1) \in p^{-1}(1)=\mathbb{Z}$$と定義する.この定義がwell-definedであることはより従う. $$ j \circ i (n) = j ([f_n])=n$$ よりj \circ i = \mathrm{id}である.従ってj全射である.j(\lbrack a\rbrack ) = j(\lbrack b\rbrack)と仮定する.これはa'(1) = b'(1)である.従ってa'^{-1}\cdot b'\mathbb{R}の原点を始点とする閉曲線である.\pi_1(\mathbb{R},0)\cong 0より\lbrack a'^{-1}\cdot b'\rbrack = \lbrack c_0 \rbrack である.従ってp_*で送ると\lbrack a \rbrack =\lbrack b\rbrack となり,j単射となる.(証明終了)

1.5 Brouwerの不動点定理

D^2 = \{z \in \mathbb{C} \mid \|z\| \leq 1 \}に対しi:S^1 \to D^2を包含写像とする.D^2も可縮なので\pi_1(D^2)= 0となる.

命題: 連続写像r:D^2 \to S^1r \circ i = \mathrm{id}_{S^1}を満たすものは存在しない.

証明: rが存在すると仮定する.(r \circ i)^*= \mathrm{id}_{\pi_1(S^1,1)}だが $$ \xymatrix{ \pi_1(S^1,1) \ar[r]^-{i_*} \ar[d]_-{\cong} & \pi_1(D^2, 1) \ar[r]^-{r_*} \ar[d]_-{=} & \pi_1(S^1, 1) \ar[d]_-{\cong} \\ \mathbb{Z} & 0 & \mathbb{Z} } $$ より矛盾.(証明終了)

Brouwerの不動点定理: 任意の連続写像f:D^2 \to D^2不動点をもつ.

証明: 不動点を持たない連続写像fが存在すると仮定する.連続写像r:D^2 \to S^1x \in D^2に対しxf(x)を結ぶ直線と円周の交点のf(x)に近いほうを対応させることで定義する.このときr \circ i = \mathrm{id}となり矛盾する.(証明終了)

1.6 代数学の基本定理
写像度: 連続写像f:S^1 \to S^1に対し写像\mathrm{deg}(f) \in \mathbb{Z}を以下の写像 $$ \xymatrix{ \pi_1(S^1, 1) \ar[r]^-{f_*} & \pi_1(S^1, f(1)) \ar[r]^-{\cong} & \pi_1(S^1, 1) } $$を用いて$$\pi_1(S^1, 1) \ni \iota \mapsto (\mathrm{deg}(f))\iota \in \pi_1(S^1, 1)$$として定める. 注意としてS^1基本群が可換であることより同型は1f(1)を結ぶ曲線の取り方に寄らない.

 ホモトピックな連続写像f,g:S^1 \to S^1に対し写像度は一致する.これはホモトピー不変に関する命題から従う.よって\mathrm{deg}(f)=nならばff_nホモトピー同値である.ここでf_nは$$f_n:S^1 \to S^1,\ \ \ z \mapsto z^n$$であり,定義から\mathrm{deg}(f_n)=nである.

代数学の基本定理 複素係数多項式$$f(z)=z^n +c_1 z^{n - 1} + \cdots + c_{n-1}z + c_n,\ \ \ n>0$$に対しf(z)=0となるz \in \mathbb{C}が存在する.(従って因数定理よりf(z)=0の解の個数は重複を含めn個ある.)

証明: f(z)の零点が存在しないと仮定する.$$p(z)=\frac{f(z)}{\|f(z)\|}$$とおく.z \in S^1とする.$$\phi(z, t):=p(tz)=\frac{c_n+t(c_{n-1}z + \cdots + t^{n-1}z^n )}{\|c_n+t(c_{n-1}z + \cdots + t^{n-1}z^n )\|}$$は定値写像z \mapsto \frac{c_n}{\|c_n\|}pホモトピーとなる.従って\mathrm{deg}(f)=0.また$$\psi(z,t):=\frac{p(\frac{z}{t})}{\|p(\frac{z}{t})\|}=\frac{z^n + t(c_1z^{n-1} + \cdots c_nt^{n - 1})}{\|z^n + t(c_1z^{n-1} + \cdots c_nt^{n - 1})\|}$$は写像z \mapsto z^np(z)ホモトピーである.従って\mathrm{deg}(p)=n.よって矛盾する.(証明終了)

1.7 問題

問題1:複素係数多項式f(z)S^1上に零点を持たないとする.ここでz \in S^1に対し \begin{eqnarray*} p(z)= \frac{f(z)}{\|f(z)\|} \end{eqnarray*} とする. このとき\|z\| \lt 1における重複も含めた解の個数と\mathrm{deg}(p)が一致することを示せ.

解答:f(z)=c(z-a_1)(z-a_2)\cdots (z-a_n)とかける.従って$$p(z)= \prod_{i=1}^n \frac{z-a_i}{\|z - a_i\|}$$である. ここで写像度の以下の性質を用いる.

写像度の性質: 連続写像f,g:S^1 \to S^1に対し
  • $$\mathrm{deg}(fg)=\mathrm{deg}(f) + \mathrm{deg}(g)$$
  • $$\mathrm{deg}(f \circ g)= \mathrm{deg}(f)\cdot \mathrm{deg}(g)$$
が成り立つ.

これはf(z)=z^n,g(z)=z^mのときを考察することで簡単に示される.従って $$\mathrm{deg}(p)=\sum_{i~1}^n \mathrm{deg}(p_i),\ \ \ \ p_j(z)= \frac{z-a_j}{\|z- a_j\|}$$となる.ここで\|a_j\|\lt 1を満たすp_jは$$\phi(z,t)=\frac{z-ta_j}{\|z -ta_j\|}$$により恒等写像とホモトピックであり写像\mathrm{deg}(p_j)=1である.また\|a_j\| \gt 1を満たすp_jは$$\phi(z,t)=\frac{tz-a_j}{\|tz - a_j\|}$$によって定値写像とホモトピックであり,\mathrm{deg}(p_j)=0である.従って題意が示された.(証明終了)

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