力学と微分方程式1 微分方程式とその解

 力学と微分方程式(現代数学入門,岩波,高橋陽一郎著)のまとめ.微分方程式のシミュレートもやる.

1.1 古典力学微分方程式

 ある関数\ F(t,x_1,x_2, \dots, x_n)\ が与えられた時,未知関数\ x(t)\ に対する関係式$$F(t,x(t),x'(t),\dots x^{(n)}(t))= 0$$を常微分方程式といい,\ n \in \mathbb{N}\ をその階数という.\ F,x(t)\ はベクトル値関数でもよい.常微分方程式は物理において自然に現れる.ニュートン運動方程式$$F = ma\ \ \ (m:\mbox{質量},a:\mbox{加速度})$$は位置の2階微分が加速度であることから$$F = m\frac{\mathrm{d}^2 q}{\mathrm{d}t^2}\ \ \ \ (q:\mbox{位置})$$と表される.\ F\ が空間微分によらず\ q\ やその時間微分のみに依存するならば,これは常微分方程式となる.もし\ F\ \ q\ の空間微分の情報が含まれるならばこれは偏微分方程式となる.

 例として万有引力をあげる.原点に万有引力があるとき,時刻\ t\ における質点は常微分方程式 $$\left\{ \begin{array}{11} \frac{\mathrm{d}q}{\mathrm{d}t} = v \\ \frac{\mathrm{d}v}{\mathrm{d}t} = -\frac{q}{\|q\|^3} \end{array} \right.\ \ \ \ \ (q,v \in \mathbb{R}^3)$$を満たす.これは距離の2乗に反比例する引力\ F=\frac{-q}{\|q\|^3}\ 運動方程式の帰結である.ただし重力定数と質量を1としている.

この方程式からすぐわかる物理的に意味のある性質がいくつかある.エネルギー\ E = \frac{1}{2}\|v\|^2 -\frac{1}{\|q\|}\ に対し $$E' = \frac{1}{2}v^2 + \frac{q}{\|q\|^3} = 0$$より\ E\ \ t\ に依らない定数となる(エネルギー保存則).また角運動量\ A=q \times v\ に対し時間微分は$$A' = q' \times v + q \times v'=v \times v + q \times\frac{-q}{\|q\|^3} = 0$$

となる.一般にベクトル\ a, b \in \mathbb{R}^3\ に対し\ a \times b\ \ a, b\ と垂直でノルムが\ a,b\ のはる平行四辺形の面積と一致するベクトルとなる.従って任意の\ a \in \mathbb{R}^3\ に対し\ a \times a = 0 \in \mathbb{R^3}\ となる.\ A\ の時間微分が0ということは\ q, v\ と垂直なベクトルが変化しないということで,\ q, v\ \ q \times v\ と直行する平面上を運動し続けることを意味する.また$$\lim_{h \to 0}\frac{1}{h}q(t)\times q(t + h)=q(t)(\lim_{h \to 0}\frac{q(t + h) - q(t)}{h}) = q(t) \times v(t) = A$$より面積速度\ \lim_{h \to 0}|q(t) \times q(t + h)\| \ は一定となる.